本記事では、Googleが提唱する『hagakure構造』について、Googleの唱えるGORINという思想と紐付けながら、その考え方と実践方法を解説していきます。
hagakureは、Googleさんが唱えている考え方。キリスト教でいうところの聖書。 『キャンペーン・広告グループを細分化しすぎず、いい感じで統合しなさい。さすれば、広告成果が上がる(だろう)』
リスティング広告における最も重要な要素であるアカウント構造。
Googleを先頭に、2013年頃から本格的に提唱しはじめられ、
大手代理店などにも浸透しつつ、“ある”アカウント構造の考え方があり、これが段々と主流派になりつつあります。
このアカウント構造の考え方はGoogle広告、Yahoo!スポンサードサーチだけでなく、
YDN・GDNのディスプレイ広告にも通ずる考え方となっております。
背景には、入札機能の自動化や、検索クエリに合わせカスタマイズされた広告文を配信可能にした、媒体のアドテクノロジーの進化があります。
今回は、これまでのアカウント構造論争の歴史とともに、広告効果を最大化するアカウント構造に関してまとめます。
目次
以前のアカウント構造の考え方
従来の考え方だと、入札調整がしやすい且つ、狙ったKWへ狙った広告文を出すという狙いの元、
とにかく、アカウント構造を細分化する考えが顕著でした。
代表的な例では、2012~2013年頃に熱が高まったアカウント構成方法として『1広告グループ1キーワード』があります。
※参考記事
その名の通り、1広告グループごとに1つのKWで構成するという考え方です。
例えば、中古車販売の事業を展開している広告主であれば
- 「中古車 売る(完全一致)」
- 「中古車 売る(部分一致)」
- 「中古車 販売(完全一致)」
- 「中古車 販売(部分一致)」
などのKWを、それぞれの広告グループに振り分けて運用を行っていきます。
最大のメリットは
- KW単位で広告文を設定できる
- 広告グループ単位で、KW単位の入札へそのまま反映させることができる
でした。
ただ、このアカウント構成だと
・ある検索クエリに対してアカウント内で競合が起きる
…検索クエリ「中古車 売りたい」に対して、「中古車 売る(部分一致)」「中古車 販売(部分一致)」が競合し、
ユーザーに対して一定の広告文を配信できない。
⇒意図通りの広告配信が出来なくなる、検索クエリと登録キーワードの完全一致率が下がる
⇒広告の品質スコア低下に繋がる
・広告グループ単位で正確かつ一定以上の量のデータが溜められない
…狙った検索クエリとは違うクエリを拾い、本当に成果の良い広告文やKWが見極められなくなる
また、細分化しすぎることで広告を統計的に評価できる量までデータが溜まるまで時間が掛かりすぎる
という重大なデメリットが生じます。
また一方でアドテクノロジーの進化に伴い、利用できるシグナル(目印)がどんどん増えていきました。
はじめは、
- 時間帯/曜日別
- デバイス/OS/地域
くらいしかなかったのが
- 男女・年代別に入札調整ができるDFSA(Demographic for Search Ads)
- 再訪ユーザーに対して運用調整ができるRLSA(Remarketing List for Search Ads)
- コンバージョン経路
- 広告のローテーション(CTRの最適化・クエリに対しての最適化)
へと拡大していきました。
↓
『いかにこれらのデータを溜めて、生かすか』というデータドリブン的な方法として、hagakure構造が一つの解として推奨されてきています。
hagakure構造について
hagakure構造とは、一言でいうと
サイトディレクトリ構造に沿った、シンプルな形のアカウント構造のことを指します。
トップページ >大カテゴリページ >中カテゴリページ >詳細 |
という、サイトのディレクトリにあわせて、それぞれの階層の役割にあわせて、アカウント構造を対応させていきます。
単一LP商材の場合は、なるべくKWの意味カテゴリで、キャンペーンや広告グループをまとめた構造を指します。
新しくキャンペーンを作る場合は、雑誌でいうところの『特集ページ』を作るに値するかという判断基準で見てください。そのキャンペーンに一定数のユーザーが集まるのかどうかという点が重要です。
hagakure構造を実現するための具体的な設計方法
検索広告の場合
■IMPが僅少のキーワードは、キーワードの意味合いが似ているものをまとめる
先述の「同じ特集ページにまとめていいクエリかどうか」の観点でまとめていきます。
IMPが僅少のキーワードしかない広告グループにある広告は、IMPが当然少ないです。そうすると、品質スコアが悪くなる可能性が高まります。
これらのIMP弱小の広告グループをまとめてあげて、広告グループ統一をすることで、よりその広告グループにある広告が適切に評価されやすくなります。
ちなみに広告文内容が異なっていても、IMPがめちゃ少ないならば基本的にはまとめた方がメリットが大きいと筆者は考えています。
■同じ広告文を使っている広告グループは統合する
オークションの流れとして、検索クエリをトリガーとしてまず広告文へ繋がります。
このオークションに合わせた構造へ、アカウントも変えていきます。※詳しくはこちら
■同じキーワードで異なるマッチタイプのものは、すべてまとめる
同じ広告グループ内なら、部分一致より、完全一致が優先される仕様となっています。
よって、同じ広告グループに各マッチタイプのキーワードを配置することで、
ドンピシャのクエリが来た際、完全一致が優先される構造が整い、最適な広告が選択され、CTR上昇&CPC低下につながります。
これにより、部分一致のキーワード同士が同じクエリに対して、オークションで喧嘩することもなくなります。
ディスプレイ広告の場合
検索広告の場合はアカウント構造を統合していく方向ですが、ディスプレイ広告でも同じことが言えます。
細かく設定されたアカウントだと、300×250、720×90などバナーサイズ別や、テキスト広告・バナー広告・レスポンシブ広告など広告タイプ別で、
広告グループを分けて管理をされているアカウントもあるかと思います。
ただ、Googleとしても、同じ場所・同じサイズの枠に対して、様々な広告(大きさ・種類)をテストして、
一番ユーザビリティが高い(≒CTRが高い)クリエイティブをあてていきたい意図があります。
ターゲティングが同様ならば、すべてのクリエイティブを同じ広告グループに入稿してあげるほうが
より広告ランクが高いものが優先され、結果的に広告コストは節約できる結果へと繋がります。
hagakureのまとめ
●impなどのデータを1つの広告グループに貯めやすく集める
●少なくとも、同じ広告文・同じURLならば同じ広告グループにする
●1つの広告グループに3~5本の広告文を入れ、Google広告側に最適化を任せる
【参考URL】
≪補足≫GORINプロジェクトについて
GoogleがGORINプロジェクトと称して推進しているものも、このHagakureと同じ思想の上にあります。
GORINプロジェクトとは、Googleが提唱するアカウント運用に関する考え方、またその啓蒙です。
基礎に『アカウント構成』の思想があり、その上に
- 『リーチ』 …日予算キャップで抑えないなど。配信機会を最大化させる設定をする。
- 『ターゲティング』…確度の高いユーザーへ確実に配信する。RLSAとか。
- 『広告フォーマット』…推奨される広告フォーマットや広告表示オプションはなるだけ全部入れましょう。
という3つの概念がぶらさがっています。
この上で、ビジネスのステージに応じた指標のもと、PDCAを回していく、というのがGORINの全体像となっています。
【参考】Adwords公式 学習資料
最後に
Googleが提唱しているHagakure、GORINですが、
これまでの運用経験や実験からすると、基本的に(8割方)信じるに足るものだと筆者は考えています。
ただ、細かいところで仕様の齟齬があったり、また商材によってアカウント構造の改変が難しい部分があります。
個々のアカウントの最適化は、運用者がこのhagakureをどう解釈するか/どう応用するかで変わってきそうです。
おわり