「Amazon」と聞くと、本を中心としたマーケティングプレイス・ECサイトのイメージが真っ先に思い浮かぶかと思います。
ただ、最近はストリーミングサービス「PrimeVideo」や音声デバイス「Amazon Echo」、またB向けクラウドサーバー「AWS」など
ECサイト以外の領域でも年々認知度を高めており、革新的な企業としても評価されています。
2018年8月には、元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が「Amazon」をテーマとした本を上梓するなど、ビジネス界でもその経営戦略は評価されています。

そんな中、Amazonは広告プラットホームとしての売上も拡大しつつあり、かなり大きなポテンシャルを秘めています。
例えば、この記事(広告会社アマゾンの成功が約束されている理由、グーグル・FBとは明らかに違う)では
米ネット小売大手アマゾンの米国における2018年のデジタル広告収入が従来予想の28億9000万ドルを大幅に上回り、46億1000万ドル(約5200億円)となる見込み
とあり、市場アナリストの予測を上回る成長を、Amazon広告は見せています。
今後も伸長することは確実で、現在のFacebook・Googleの2強体制から、Amazonを加えた、F・G・Aの3強体制になる可能性が示唆されています。
現在EC業界の方は当然活用していますが、実は、ECとまったく関係の無いの自動車メーカーや金融業界にも活用が進んでいます。
今回はそのAmazonの広告プラットホーム「Amazon Advertising」の概要について深堀りします。
目次
AmazonのECプラットホームとしての強み
本題に入る前に、
なぜamazon広告は伸びているのか、その土台を支える「Amazon.com」の強みを分析します。
ユーザー行動がAmazon起点へ変化している
インターネットが普及してから2010年頃までは、
ネット上でモノを買う場合、ユーザーの行動としてはまず「Googleで検索」でした。
それが、ここ5年程で「Amazonや楽天などのECサイトで検索」に移りつつあります。
ニールセンのレポートデータでは、Amazon・楽天などのECサイトから検索を始める人が50%以上に達しています。
つまり、Amazonがユーザーの購買行動の起点となっているのです。
また、ユーザー行動が昔のような線形モデル(AISASなど。TVCMを見て認知し、近くの店舗で購入するといった真っ直ぐなモデル)ではなく、
- 店舗でウィンドウショッピングをした後、Amazonで購入する
- 店舗で商品をみつけて、Amazonの口コミをみて、その店舗で購入する
- Amazonで見つけた商品を、家電量販店まで出かけて購入する
など、リアルとWEBを行き来する複雑なモデルとなってきています。
またアメリカの調査会社CPCStrategyのレポートでは「70%のユーザーはAmazonで『ウィンドウショッピング』する」という結果も出ています。
つまりamazonは、WEB上でモノを売るプラットフォームだけでなく、商品認知や口コミを閲覧するプラットホームへと変化しつつあるのです。
1億人の『クレジットカード』と『住所』のデータ
また当然ながら、Amazon.comには、ユーザーの購買データが全て蓄積されています。
会員登録者数も、2018年に全世界で1億人を突破しており、きちんと購買データと個人会員データが紐づけられた形となっています。
もっとも強いのがFacebookとGoogleが握っていない『クレジットカード』と『住所』のデータを握っている点です。これらで世帯年収なども分かります。
このデータが広告に活用されることにより、より適切な人へより適切な広告メッセージを伝達することに繋がります。
前提であるamazon.comの強みを理解した上で、広告の概要に移ります。
Amazon Advertising(Amazon広告)の4プロダクト
2018年9月に、担当部署も管理画面も異なる広告プロダクトを統合し、名称を統一した結果、今の『Amazon Advertising』となっています。
その中に、主要プロダクトとして下記の4プロダクトがあります。
- Sponsered Ads(スポンサー広告)
- Amazon DSP
- Amazon Video Ads(動画広告)
- Ecommerce Metrics(EC版BIツール)
今回は、直接広告に関わる、上3つについて解説します。
Sponsered Ads(スポンサー広告)
基本的な検索広告です。クリックされた際に料金が発生するクリック課金型の広告です。
これは当然ながらAmazon内に商品を出品している企業向けのプロダクトとなっています。
ターゲティングは、基本的に『キーワード 』で設定します。別途掲載面を設定する必要があります。
掲載面は3種類あります。
検索結果面にでる、スポンサードプロダクト広告

商品ページに関連商品として表示される、商品ディスプレイ広告

検索画面の最上部にリッチコンテンツで配信できる、スポンサーブランド広告

Amazon DSP
AmazonDSPは、Amazon内に保有しているユーザーデータを活用して
Amazonや他の配信面に広告配信を行う、広告プロダクトとなっています。
他の配信面はRubiconやDoubleclick、FluctやYieldOneなどの主要パブリッシャーと提携しているので、申し分ないです。
また、PMP(Private Market Place)における配信も力を入れており、ブランド毀損を防ぎたい大手企業でも出稿しやすくなっています。
Amazonのデータを使用した下記のターゲティングが可能です。
ターゲティングの種類
- ライフスタイルターゲティング…Googleでいう『アフィニティカテゴリ』。『車好き』などユーザーのライフスタイルでターゲティング。
- ホットカスタマーターゲティング…Googleでいう『In-Market-Category』、直近の購買意欲でターゲティング。
- ニューカスタマーターゲティング…90日以内にAmazon内ではじめて購入したカスタマーをターゲティング。
- エリアターゲティング…47都道府県で切れます。
- デモグラフィックターゲティング…年齢・性別・世帯年収・職業・未既婚などをターゲティング。
- アドバタイザー・オーディエンス…広告主所有のメールアドレスのリストを元にターゲティング。
- 商品カテゴリ…指定商品カテゴリの検索結果ページなどに配信
GDNと似通っていますが、『商品カテゴリ』などAmazon特有のターゲティングもあります。
Amazon Video Ads
最後に動画広告です。直近リリースされたプロダクトで、また発展途上です。
現在は主に純広告としての配信扱いとなっています。
ただ、消費財メーカーなど広告主側の引き合いも強く、今後発展可能性を大きくはらんだプロダクトです。
活用イメージ
ECサイトはスポンサー広告は必須
上述したように、カスタマーの購買の一連の流れに食い込める貴重な広告プロダクトです。
ECサイトならば活用しない手はありません。ただ、広告出稿の前に、自社のAmazonページを改めて見直すことも重要です。
ユーザーは商品を『比較』し、『特徴』や『口コミ』を気にしています。
ユーザーが望むコンテンツを、画像や動画などリッチなクリエイティブでAmazonページ内に配置できますので、自社カスタマーのインサイトに沿ったコンテンツ作りを行う必要があります。
ECサイト以外は認知、ペルソナ策定
Amazonは、実は日本国内では、SPにおけるユーザー数8位のメディアで、露出媒体としての大きな価値を持っています。(PCは6位)

また、それだけでなく、自社のターゲットユーザーがどんなインサイトを持っているか、豊富なAmazon購買データを活用することで探ることができます。
例えば、自動車メーカーが様々なカテゴリに出稿した場合、『PC購入ユーザー』や『宝石購入ユーザー』など新たなペルソナを発見する可能性があります。
まとめ
今回、Amazon広告に絞って解説しましたが
Amazon.com内のSEOや、商品ページUX改善も売上拡大のための重要なファクターとなってきます。
広告を検討する際、それらの施策も含めた総合的な予算アロケーションを検討すべきです。
おわり
(ただ、Amazonの詳細(キャッシュフロー経営や倉庫会社としての一面)について理解しているよという人にはおすすめしません)