「ストーリーとしてのマーケティング戦略」を考える

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企業と顧客の関係は主客で分けるべきか? 高広氏が語る「コンテクスト」を重視したマーケティング

1月15日に公開されたスケダチ代表の高広 伯彦氏が登壇された上記の記事を読んで、

最近のWEBマーケティング傾向をうまく抽象化されていると、感銘を受けました。

 

簡潔にいえば「ストーリーとしてのマーケティング戦略」が重要になってきていると私は考えています。

直近の具体的なマーケティング傾向と絡めて、さらに論を展開させてみたいと思います。

 

ブランディングは「主客」の垣根を無くす

当該記事冒頭で

マーケティングにおいて、「主客」の区別がなくなっている

(中略)

従来のマーケティング施策においてはマーケターが「主」であり、ターゲットとなる顧客は「客」となる。しかしこの関係性自体を本質的に見直さなければならないのではないか?

と述べられています。

この事象の具体的な施策として、『SNSマーケティング』があると考えています。

 

ITの進展・スマートフォンの普及により情報発信者としてのカスタマーが出現してきます。

この情報発信者としてのカスタマーを重要視した広告手法として、SNSマーケティングが広まってきています。

 

SNSマーケティングやブランディング戦略について論じている、高橋遼氏の著書「熱狂顧客戦略」では

熱狂を巻き起こす企業の顧客戦略は「囲い込み」ではなく「顧客と共に未来を描いていくこと」にシフトしている

と記されています。

 

つまり、「客体」である顧客を、「主体である」事業社側に巻き込むという、「主客」の垣根を無くすという行為

積極的に行っていこう、そういう戦略にすべきだという提案です。

 

熱狂顧客を増加させようとするブランディング戦略は、「主客」の垣根を無くそうとしている、ともいえます。

 

「主客」がなくなっているのはマーケティングだけではない

 

マーケティングにおいて、「主客」の区別がなくなっている

ユーザーや競合を巻き込んだ形でのマーケティングが近年進んでいることを高広氏はこう表現しています。

 

実はマーケティングだけでなく、事業モデルとしてもこういった「主客」のないCtoCマッチングのビジネスモデルが流行りです。

例えば、急成長しているUberAirbnbは、ユーザーがサプライヤー(供給者)にもなりえるビジネスモデルで、「主客」がありません。

Kaizen Platform代表のスドケンさんのnote記事(リクルートのリボン図が通用しなくなる理由)には以下のような指摘があります。

マッチングシステムの上に、人と人の要素が乗ってくるのが、これからのリボン図のあるべき姿だと私は考えています。

(中略)

特定の個人が、どのような実績を持っているのか?その情報とどのように関係しているのか?ということがカスタマーから問われていくと思われる。

会社やお店の上に人対人を前面にしていく日が来るというのが、今私が感じているカスタマーの潮流なのです。

ここでは、スドケンさんの将来展望として

企業(B)を間に挟まない、人対人のビジネス、つまり

「主客」のない個人をベースとしたビジネスが今後広がっていくだろうと予想されています。

 

マーケティング施策上、ストーリーが最大の差別化要素となる

マーケティング戦略やビジネスモデルも、模倣しようとすればできてしまうものです。

ただ、その模倣にあたっての参入障壁を最大化させる武器として、「ストーリー」があります。

 

経営(ビジネスモデル)の領域においては、楠木 氏の『ストーリーとしての競争戦略』という本で、「ストーリー」の競争優位性が論じられています。

この本の主張は「優れた競争戦略はストーリーとして語られうる」というものです。

この「優れた競争戦略」=「ストーリー」をうまく構築した企業として、Amazonが取り上げられています。

 

有名な話なのでご存知の方も多いと思いますが、

下記の図解は、Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが、創業前にカフェで仲間とミーティングをしていたときに、紙ナプキンに書いたループ図です。

関連画像

低価格戦略(LOWER PRICES)に基づく顧客体験(CUSTOMER EXPERIENCE)。これがこのビジネスモデル、ストーリーのコアです。

低価格戦略(LOWER PRICES)がアクセス数(TRAFFIC)を呼び込み、販売量(SELLERS)が増えれば、商品の品ぞろえ(Selection)が広がり、顧客体験(CUSTOMER EXPERIENCE)の質がさらに向上する。

また、このサイクルの成長によって、低コストの物流インフラ(LOWER COST STRUCTURE)を構築でき、低価格を実現、さらなる顧客体験の質の向上が加速する。

今ではプラットフォーマーの戦略として当たり前のものとなりましたが、1990年代初頭に、Eコマースのこの本質に気づき戦略を建てたのがジェフ・ベゾスでした。

 

 

では良いストーリーを設計するにはどうすればいいのでしょうか。

ここで冒頭の高広氏の記事に戻ります。

マーケティングにおけるコンテクストとは、「企業、業界、消費者、メディア、社会などによってブランド(商品・サービス)に埋め込まれる文脈や環境のこと」と高広氏は位置付ける。

(中略)

コンテクストプラン二ングには、顧客、社会、業界、自社の4つの文脈があると高広氏は話す。

顧客の環境、認識、視点を考え、ニュースやメディアなどで社会的にどのような文脈があるかを考え、商品やブランドが所属する業界のトレンドや流通などの文脈を考え、自社やブランドの歴史や認知などの文脈を考え、文脈を紡ぎ合わせることによって商品の価値を見出すことができる

 

顧客、社会、業界、自社の4つの文脈を解釈・理解し、それぞれの文脈を紡ぎ合わせることで商品の価値を見出すことができると、氏は語っています。

コンテストプランニングでは企業自身の「資産」や「業界」にも注目をするので、ユニークネスを探しやすい

自社の要素が紬合わせられることで、容易に真似されることが無くなる、とも語られています。

 

自社のブランド(商品・サービス)を理解した上で、どう外部環境の文脈とつなげていくか、

ここに『ストーリーとしての競争戦略』で語られていた「ストーリー」の要素が応用できるのでは、と考えています。

 

そもそも、自社のブランド(商品・サービス)が模倣されやすいコモディティなものであれば、「コンテキストプランニング」を行ったとしても模倣されます。

自社のブランド構築の独自性をもたせるにはどうすればいいのか、

私は、商品・サービスを取り巻く経営/構成要素のストーリーこそが、自社のブランド(商品・サービス)に独自性を持たせると考えています。

 

自社ブランドが強い代表的な企業の1つに、「スターバックス」があります。

スターバックスのコンセプトは第三の場所「third place」です。

『ストーリーとしての競争戦略』では次のように説明されています。

「1980年代に入って、アメリカは価値観の断片化が進んだ結果、過剰なハイテンション社会になりました。職場では競争のプレッシャーが強く、家庭でもいろいろな問題があります。

そうした人々は、職場とも家庭とも異なる「第三の場所」を欲しているのではないか、というのがシュルツさんの洞察でした」

(中略)

つまり、コーヒーを売るのではなく、くつろいだ雰囲気の中でテンションを下げるという経験なり文化を売るというのがスターバックスのコンセプトで、

コーヒーそのものはそうした経験を提供する手段であるという考え方です。

 

では、どうやって「第三の場所」というコンセプトを”模倣されにくい”ストーリーとしての競争戦略へと設計したのか。

では、スターバックスを5つの構成要素に分解します

  1. 店舗の雰囲気
  2. 出店と立地
  3. オペレーション形態
  4. スタッフ
  5. メニュー

これらの5つの構成要素がすべて、『第3の場所』というコンセプトを紡ぎだす為にストーリーが組み立てられています。

 

1の雰囲気では

  • 店内禁煙
  • コーヒーの香り
  • 間接照明
  • 穏やかなBGM
  • 座り心地の良い大きめのソファ
  • 相対的に(例えばドトールと比べてずっと)少ない店舗面積あたりの席数
  • さまざまなリラックスの仕方(1人でくつろぐとか、友達とおしゃべりをするとか)に合わせて異なったタイプの席を用意すると言うレイアウト
  • 多くの店では紙コップを使う(陶器のカップを使うとカチャカチャと言うノイズが広がるので)

2の立地では

スターバックスはプレミアム立地に集中して出店すると言う戦略をとりました。
日本に参入したときも当初は、銀座から始まって、丸の内、大手町、六本木、麻布、渋谷、青山といった一等地に出店を限定していました。

(中略)

直前までハイテンションであるだけに、スターバックスに入ったお客さんはリラックス空間をより強く実感するだろう。

そうであれば、スターバックスのコンセプトが構想する顧客提供価値をより効果的に浸透させることができる、というわけです。

3のオペレーションでは

チェーン・オペレーションの形態としては、大別してフランチャイズ方式と直営方式の2つがあります。

第三の場所というコンセプトを実現し、維持するためにはサービスの様々な側面で細かいコントロールが必要になります。

そのためには、個々の店舗に独立のオーナーがいるフランチャイズ方式ではなく、直営方式が必要になるという考え方です。

4のスタッフでは

スターバックスは店舗のサービスに従事するスタッフを「バリスタ」と呼んでいます。シュルツ氏がイタリアのミラノに出張し、バールを経験し、その文化的な深みにいたく感銘を受けました。

(中略)

スキルやノウハウを持ったバリスタを定着させるために、スターバックスは週20時間以上働く人々を「パートナー」と呼び、ストックオプションや健康保険の適用など、様々なベネフィットを提供しました。

5のメニューでは

第三の場所の提供が目的であり、コーヒーという商品はそのための手段だとしても、高品質のコーヒーは顧客が第三の場所を楽しむために必須の条件です。

(中略)

新鮮さを保つために、コーヒー豆は包装を開封してから七日以内に消費されなくてはならないというルールが設定されました。

 

このようにそれぞれ5つの構成要素ごとに、第三の場所というコンセプトと明確な因果論理で繋がり、スターバックスの戦略は「強いストーリー」となったのです。

どれか1つの要素を模倣してもスターバックスのように強烈な線でつながっていないので、表面的な模倣となり、本質から離れていきます。

 

自社のブランド(商品・サービス)の独自性の構築においても、同様のことが言えると考えています。

ただやみくもにブランディングCMをマス広告に流し続けるだけでは独自のブランドは構築できません。

マーケティングの一つ一つの施策が、ある一つのコンセプトに沿ったものであり、それを元に構築されていくことが模倣されにくいブランドへとなるのではないか、そう考えています。

 

(追記)

元マクドナルドCMO、現ナイアンティックの足立さんも同様のことを仰っていました。

https://markezine.jp/article/detail/30314

 お客さんは日々、様々な種類やチャネルで企業のメッセージに触れているので、全部を考えないと効果的な設計はできないですよね。メッセージに一貫性がないと、影響力も弱くなってしまいます。

全体を考えられず、ソーシャルメディアの活用が点になってしまっている場合、おそらくTwitter社や広告代理店が困るのが、すでにできあがった商品を「なんとか話題化して売りたい」と頼まれることだと思います。本来、ターゲットと売り方を見定めてコンセプト化してから商品設計に落とし込むべきなのに、それができていない。

 

横串でメッセージを統一し、どういうコンセプトで、誰にどの程度届けたいかを決めた上で、最後にメディアを決めるという順番でメディアプランを構築すべきだ、

ということをお話されています。

 

 

おわり

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