【AI談義】<人間の仕事 vs AI>がどこから始まるか

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本記事では、人工知能が代替する職種・その構造から、人間が身に付けるべきスキルを分析します。

●代替される職種

「人工知能が人間の仕事を奪う」という話題が、週刊誌や書籍に並ぶようになって久しいですが、

この言説が人口に膾炙したのは下記の論文がきっかけではないでしょうか。

 

https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

この論文ではオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内の702の職種について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しています。

具体的な職業を明記したために、日本国内でもインパクトが大きかったと記憶しています。

 

下記に、消える可能性の高いTOP30をまとめました。(アメリカの職種なので日本語訳がズバリのものが無かったりしました)

分類してみると

  • 人との電話での会話 →チャットボットでの代替
  • 審査×保険や証券などの金融 →フィンテックでの処理
  • 小売り、窓口の店員 →タッチパネルなど人的効率化
  • 機械のオペレーター →全自動、機械を監視するAIの登場
  • 衰退産業の従事者 →別の産業へ。ラジオならインターネット、写真ならスマートフォンへ。

などがあります。

まとめると、ある程度、受け手の反応が一律で、処理が統一化しやすい職種といえます。

 

また、このような代替可能性の高い職業が、野村総研の試算では、日本の労働人口中49%だと試算されています。

これはアメリカやイギリスを上回る値となっています。

出典:株式会社野村総合研究所/日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に

この数値だけみるとかなり衝撃的な結果となっています。とはいえ、実際はどうなのでしょうか

 

●人工知能による仕事代替論の影響の推測は、大きく2つに分けられる

  • 影響は限定的なものだ。歴史的にみると、「機械」が人間の仕事が代替してきたが、機械をつくる職・機械を使う職・機械の販売やメンテナンスをする職が出てきたじゃないか、とする楽観論
  • 人工知能の発展は、これまでのテクノロジーと性質の違うものであり、これまでの機械などの代替インパクトとは桁が違うとする悲観論

上記の2つの論におおまかに分類できると思います。

 

本記事では、後者の悲観論的立場を取ります。

なぜなら、これまで生み出されてきたテクノロジーはあくまで人間でいう手足の機能でしたが、これから創出される可能性のあるAI(意味を理解している人工知能、強い人工知能)は人間の頭脳の役割を果たすからです。

これまで産業の発展は、頭脳(人間)+手足(機械などのテクノロジー)で進んできて、人間の存在が制約となってきました。
一方、21世紀後半の産業発展は、頭脳(AI)+手足(機械などのテクノロジー)となり、これまでの制約が解消される可能性があります。

これらの部分を、構造化してみていきます。

●AIは人間の「抽象化」の能力と、「具体化」の能力を代替していく

松尾豊「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(2015)では

人間の仕事として重要なものは大きく2つに分かれるだろう。

1つは「大局的でサンプル数の少ない、難しい判断を伴う業務」で経営者や事業の責任者のような仕事である。(中略)

一方、「人間に接するインターフェースは人間の方がいい」という理由で残る職業もある。たとえば、セラピストやレストランの店員、営業などである。

また、井上智洋「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」(2016)では

  • クリエイティヴィティ系(Creativity、創造性)
  • マネージメント系(Manegement、経営・管理)
  • ホスピタリティ系(Hospitality、もてなし)

といった三つの分野の仕事はなくならないだろう

と述べています。

これらを簡単にまとめると、

「いかに抽象化できるか」と「いかに具体化できるか」という能力ではないかと考えています。

ビジネスにおいて、リアルの世界にあるさまざまな情報を私たちはまとめています。それらを分析し、「売上が上がっている」「顧客単価が下がっている」との情報へ抽象化、対策を検討し、またリアルの場へ戻していくプロセスだと考えられます。

例えばファミリーレストランであれば

  • 店舗にて接客、POSデータから売上を収集・分析を行い
  • マニュアル改善、次の新商品策定、経営方針を策定
  • 店舗へフィードバック、実際の接客・商品提供へ

のような流れとなってきます。

 

現在、デジタル化に伴い、大量のインプットがある今、ビッグデータ処理とそれに伴うAIが隆盛しています。

青丸部分がテクノロジー側が活躍している部分です。赤丸部分が人間が最も活躍できる領域と考える部分です。

ここで補完財と代替材という考え方を引用します。

コーヒーと紅茶、ビールとウイスキーなどのように、同じ用途に用いられる財の関係を「代替財」と呼びます。

これに対して、コーヒーと砂糖、カメラとフィルムなどのように、二財を結合して使用する財の関係を「補完財」といいます。

 

■インプットの領域

AIが勝っており(今後勝っていき)、人間は代替されていきます。

この部分では、人間は勝負することが難しく、データの整形を助けるデータサイエンティストのような職業しか残らない可能性があります。

■データ処理の領域

AIからのアウトプットから人間がどう考えるかという、補完財的な関係になります。

この人間のスキルが「クリエイティビティ」「マネジメント」だと考えます。インプットが少ない場面では、よりこれらのスキルが生きてきます。

■アウトプットの領域

代替される部分が多く、人間は差別化を図る必要があります。このスキルが「ホスピタリティ」だと考えます。

例えば、飲食業界(お寿司)でいえば、いかに安く提供するかで勝負する回転寿司と、寿司職人がおもてなしを行う寿司屋の二分化が進んでいくと考えています。

 

 

ここで、先ほどの職種分析の論文から、「残る」職種TOP30も下記に引用します。

 

「ホスピタリティ」系の職種が多く上がっていることがわかると思います。

また、医療など命に関わる専門職は代替されない存在として残っていくと推測されています。

こうみると、人間は「具体化」の能力こそ、産業としては残っていくのではないかと推測できます。

 

サプライチェーンの各部分でAI適用の可能性がある

wikipediaからの引用ですが、

一つの製品がユーザーの手元に届くまでに、複数の企業の複数の工程・販路を経ます。

 

この各々のサプライチェーンのブロックの中で、入れ子構造的に、

インプット➡データ処理➡アウトプット

の構造があると考えています。このそれぞれにおいて、AIによる自動化・効率化が図られていくものだと予想しています。

 

例えば、「デザイン」の領域では、自動でデザインを行うアウトプットの領域で革新が進んでいます。

Adobe Summit 2018の発表から、新プロジェクトについて引用します。

Adobe Summit 2018の深津さんの取材記事

●Video Ad AIは動画広告を分析し、パフォーマンスを最大化するプロジェクト

過去の動画広告事例のデータから、この動画がどれくらい見られるか」や「FacebobokとInstagramどっちに向くか」などの確率を、事前予測してくれる。

さらにその広告に対して、「もっと短くしたほうが見られるよ」とか、「こういう展開がいいんじゃない?」など、パフォーマンスをあげる提案も。

また動画のなかから、サムネールとして最適な部分を抽出したり、見所を切り出したアニメgifなども自動生成

さらには、動画の一部だけを抽出して、まとめ動画なども生成してくれる。

 

Master Planは、顧客の初動体験からロイヤル化まで、あらゆるキャンペーンの叩き台を、自動提案してくれるプロジェクト。

キャンペーンに対する要件をテキストで書き、目的や商品などを指定するだけで、人工知能が解析をし、様々なアシストをしてくれる。

デザインの領域では、豊富なインプットがあるため、

具体的なアウトプットの叩き台を作成するところにまでAIが進出するようになっています。

 

このように、インプットが豊富な領域から徐々にAI活用が進んでいく未来が想像できます。

加えて、このようなインプットとなりうるデータを貯める仕組みづくりの進行が、これから10年顕著になりそうです。

例えば、スマートスピーカーのような音声認識デバイスも、人間の音声(インプット)を幅広く拾うための仕組み作りだと捉えられています。

 

現在はで、データは「21世紀の石油」だと捉えられ、データを収集できるプラットフォームを握る企業(GAFA、Google・Amazon・Facebook・Apple)は今後もさらに勢力を増していくだろうとみられています。

参考:データ経済の規制:世界で最も価値ある資源

 

構造化して捉える

まだ、テクノロジーは、部分的にしか人的労働を代替できていません。

回転寿司の回るテーブル然り、居酒屋のタッチパネル然り、デジタル領域におけるビッグデータ解析然り。

 

サプライチェーンでみると、一つ一つのチェーンの中は最適化できても、全体最適はできていない状況です。

ここの全体最適化マネージメントも人間の経験とスキルが最も役立つ場面のひとつだとも考えています。

 

AIが活用される分野を構造化してみてみると、更にわかりやすくなる、という記事でした。

 

参考文献

Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」(2013)

井上智洋「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」(2016)

松尾豊「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(2015)

田中淳・松本健太郎「誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性」(2018)

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